当サイトでは今後生命科学系の論文を紹介していく予定です。そこで気になってくるのが著作権。
最近YouTubeやブログで論文紹介している人は多いし、収益化している人もいるけど、実際どこまでが許されるのか。
論文紹介をするにあたって調べてみました。
論文紹介でも著作権に注意が必要!
結論からお伝えすると、ホームページやYouTubeなどで論文紹介をする際には著作権に注意する必要があります。
論文は事実を伝えるもののため、もしかしたら著作権の対象にはならないのではないかと思っていましたが、どうやら論文も基本的に著作物(著作権の対象となるもの)のようです。
著作物とは次の3つを全て満たしているもののことです。
- 思想または感情を含む
- 思想または感情を創作的に表現している
- 文学、学術、美術、音楽の範囲に属する
「創作的」というと、芸術作品などのようにクリエイティブな分野を想像しがちですが、著作権の条件として考える時のポイントは「誰が作っても同じものができるかどうか」だそうです。
論文は実際にとった生データを研究者が解釈し、そのデータを処理してグラフや表や文章として表現したものです。
そのグラフ、表、文章などは作る研究者によって変わってくるので、「創作的」なものということになります。
つまり、論文も著作物の3つの条件を満たしているので、何も考えずに紹介すると著作権侵害となってしまう可能性があるのです。
著作権侵害とは
では、具体的にどのようなことをすると著作権侵害となるのか。
それには著作権の内容を詳しく見ていきましょう。
実は著作権には「著作者人格権」と「著作権(財産権)」があります。
それぞれどんなものなのでしょうか。
著作者人格権
著作物を通して表現されている著作者の人格を保護するための権利です。
具体的には次のようなものがあります。
- 公表権→著作物を勝手に公開してはいけない
- 氏名表示権→勝手に作者の名前を公開したり、ペンネームをつけたりしてはいけない
- 同一性保持権→著作物のタイトルや内容を勝手に変えてはいけない
論文紹介に関わってくるのは「同一性保持権」でしょうか。
こちらは曲などの場合で解説されることが多いですね。
勝手に替え歌を作る、編曲する、などが同一性保持権の侵害になります。
論文の場合は言い回しを変更したり、一部を削ったり、追加したりすることがこれにあたります。
著作権(財産権)
もう一つは著作物の使用料を得る権利です。
著作権のうち「著作者人格権」は作者が持ち続け、こちらは他人に渡すことができませんが、著作権(財産権)は他人に売ったり譲渡したりすることができます。
著作者人格権とあわせた「著作権」の方と紛らわしいので、これ以降は「財産権」と言いますね。
財産権には著作物の利用の仕方によって様々なものがありますが、特にネット上で論文紹介する場合に注意するべきなのは「翻訳権・翻案権」です。
例えば英語の論文を和訳して公開すると翻訳権の侵害になります。
また「翻案」とは、それを見れば元の作品がどのようなものかわかる形で作品を改変することです。
論文の要約などがこれにあたります。
読んでも論文の本質的な内容がわからないような2-3行の要約やキャッチコピーのようなものは翻案にあたらないそうですが、はっきりとした定義があるわけではないのでちょっとこわいですね。
論文紹介する方法
ここまでで論文の一部改変、翻訳、要約は著作権侵害になる可能性があるということを見てきました。
それでは、世に出ている論文紹介は実は著作権侵害なのでしょうか?
実は、次の事に気をつければ、著作権を侵害しないで論文紹介することができます。
著作権をもたない部分だけ使う
著作物とは上に示した3つの条件を全て満たしたもののことです。
例えば論文で明らかになった科学的事実は「創作的に表現したもの」ではありません。
つまり、論文からは事実だけを紹介し、あとは自分の考えや解釈を書いていくという場合は著作権侵害にはなりません。
著作権者に許可をとる
どうしても翻訳や詳しい要約などを公開したい論文の場合は、著者や出版社など、その論文の著作権を持つ相手(著作権者)に直接連絡をとり、許可をもらうのも一つの手です。
ただ、これはハードルが高いですし、使用料を支払うことになるかもしれません。
CCライセンスを採用している論文を使う
CCライセンスとは、インターネット時代のための新しい著作権ルールのことです。
この表示がある作品は、ライセンスの示す範囲内で作品を自由に利用できます。
つまり、翻訳や要約なども認められているわけですね。
ライセンスの種類によっては翻訳・要約などの収益化も可能です。
特にNature系のジャーナルではオープンアクセスの論文を中心に、CCライセンスの表示を推奨しているそうです。
引用を活用する
本文の一部を引用することは著作権侵害にはあたりません。
引用する場合は、原文と一緒に翻訳を載せることもできます。
ただし、引用にはルールがあり、これを守らなければ著作権侵害となる可能性があるので、十分注意する必要があります。
引用のしかた
それでは、論文紹介で引用をする際には、どのようなルールがあるのか最後に見ていきましょう。
自分の著作物が内容の中心であること
引用とは自分の著作物の中で他者の著作物の一部を紹介することです。
「論文紹介」という自分の作品を作るイメージで、自分の意見や感想を入れましょう。
また、論文の引用が内容のほとんどを占めているのもNG。
具体的に何割と決まっているわけではありませんが、あくまで内容の中心は自分の考えになっている必要があります。
引用する必然性があること
「論文紹介」という著作物を通して、自分の考えや感情を表現することになります。
それを表現するためには引用しなければいけない、という必然性が必要です。
論文紹介を通して伝えたいことを明確にしてから記事を書くと良いでしょう。
引用の方法を守る
では、実際に引用する時のルールを見ていきましょう。
本文をそのまま使う
引用の場合は引用する部分を一語一句変えずに使う必要があります。
言い回しや語尾を変える、一部を省略する、付け足す、漢字変換orひらがな表記などは全てNGです。
これらは同一性保持権等の侵害になるからです。
ただし、前にも少し書きましたが、翻訳を添えることはできます。
引用部分を区別する
引用した部分と自分で書いた部分は、はっきりと区別する必要があります。
ブログやホームページの場合、引用部分の周りに枠を追加することが多いです。
私はWordPressを使ってこのページを作っていますが、ブロックエディターでは下のような「引用」のブロックを入れることができます。
引用した文章
引用元
引用元を明記する
引用した文章に引用元を正しく添える必要があります。
題名、著者、出版社、ページ数などを明記して引用元を特定できるようにしましょう。
まとめ:正しい論文紹介のしかた
インターネット上での論文紹介は最近増えてきていますが、著作権侵害にならないよう注意が必要です。明確な基準がないルールも多いので、CCライセンスが表示してある論文に限るのが一番安全なのではないでしょうか。
それでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
参考ページ
・CRICホームページ :https://www.cric.or.jp/db/index.html
・文化庁ホームページ:https://www.bunka.go.jp/index.html
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