心臓は昔から「命の象徴」のような意味を持ってきました。体の中心で生きている限り常に拍動し続ける心臓は、科学的な知識がなくても、生命にとって特別な意味を持つように感じられます。
実際、心臓が止まると人間は死んでしまいますが、これは心臓が生きる上で不可欠な役割を持っているからです。
今回はそんな心臓の構造と役割について、中学生レベルでわかりやすく解説していきます!
心臓の役割
心臓の役割を一言で言うと、「酸素を含む血液を全身へ送り出すこと」です。
血液は、全身の細胞が生きるためのエネルギーを作り出すのに必要な酸素を運んでいます。酸素を含む血液が細胞に行き渡らなければ、細胞は死んでしまいます。
この、生きるために不可欠な血液を送り出す役割を果たしているのが心臓ということです。
血液の役割については、こちらの記事で詳しく解説しています!↓
心臓は肺と全身に血液を送る
心臓は全身に血液を送り出し、送り出された血液は全身を巡った後、ふたたび心臓に戻ってきます。この、心臓→全身→心臓という血液の流れを体循環と呼びます。
しかし、全身を巡り続けるだけでは、酸素が消費され、代わりに二酸化炭素が溜まっていく一方です。全身に酸素を運ぶためには、肺で取り込んだ酸素を血液に受け渡さなければいけません。
酸素の受け渡しは、血液が肺を通る時に行われます。この肺を通る、心臓→肺→心臓という血液の流れを肺循環と呼びます。体循環の一部で肺を通るのではなく、肺には肺専用の経路があるのですね。
肺の役割や肺での血液への酸素の受け渡しについてはこちらの記事で解説しています!↓
心臓の構造
私たちが眠っている間も、常に動き続けている心臓。小さい頃に、疲れて止まっちゃわないのかな?と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
実は、心臓は全体が「心筋」という特別な筋肉でできています。「筋肉」と聞くと腕や脚についている筋肉を思い浮かべるかもしれませんが、心筋はこのような筋肉とは次のような違いがあります。
普通の筋肉は、動かし続けると疲れてそれ以上動かせなくなってしまいますが、心筋は非常に疲れにくくできています。
心臓には4つの部分がある
それでは、心臓のもっと詳しい構造を見てみましょう。
心臓には、次の二種類の部分があります。
心臓は中央で左右に区切られていて、そのそれぞれに心房と心室が1つずつ、つまり心臓には全部で4つの部分があります。心臓の持ち主から見て右側にある部分が右心房、右心室、左側にある部分を左心房、左心室です。
心房には肺や心臓から戻ってきた血液が流れ込み、次に下側の心室に血液が送られます。そして、心室から再び肺や全身に血液が送り出されるのです。
この時、心室から心房へ、また血管から心室へ血液が逆流しないよう、左右それぞれの心房と心室の間と心室と血管の間には弁があります。
血液の循環
心臓の4つの部分は、それぞれ別の部分に繋がって、別の役割を果たしています。
血液が全身へ送り出され、心臓へ戻ってきてから、再び送り出されるまでの流れを見てみましょう。
体循環で全身を巡ってきた血液は、心臓に戻った後、一度肺循環に入って二酸化炭素と酸素を交換した後、再び心臓に戻ってきます。この体循環と肺循環で、心臓の4つの部屋が別々の役割を果たしているのです。
動脈と静脈
前回、血液の話をした時に、動脈と静脈について説明しました。それぞれの定義を少しおさらいしてみましょう。
前回は体循環を中心に解説しましたが、肺循環にも同じように動脈と静脈があります。
心臓から出て肺へ向かう血管が動脈、肺から出て心臓に戻る血管が静脈です。これらを体循環の動脈、静脈と区別して、肺動脈、肺静脈と言ったりします。
体循環でも肺循環でも、心臓に対する血流の向きで、動脈・静脈が区別されているのです。しかし、ここで注意しなければいけないのが、次に解説する動脈血・静脈血の区別です。
動脈血と静脈血
血管とは別に、血液にも動脈血・静脈血の区別があります。これらは見た目で見分けられます。
実は、血液の赤色の正体であるヘモグロビンは、酸素に結びついている時は鮮やかな赤、結びついていない時は暗い赤になります。
そして、酸素と結びついたヘモグロビンが多い、鮮やかな赤色の血液を動脈血、酸素と結びついたヘモグロビンが少ない、暗い赤色の血液の静脈血と言うのです。
手首などから透けて見える青い血管は静脈で、その中を暗い色の静脈血が流れているから青く見えます。しかし、ここで肺循環のことを考えるとややこしいことが起こります。
体循環では、動脈に動脈血が、静脈に静脈血が流れています。ところが肺循環の場合、心臓から出て肺に向かう肺動脈に流れているのは酸素が少ない血液、静脈血です。この後、肺で酸素を受け取って、心臓に戻る肺静脈には、酸素が豊富に含まれた動脈血が通ります。
動脈血、静脈血という名前は体循環が基準になっているんですね。動脈・静脈、動脈血・静脈血の定義をしっかり覚えておきましょう。
いろいろな動物の心臓
最後に、人間以外のさまざまな動物の心臓のつくりを紹介します。
イヌや鳥
イヌや鳥の心臓は、人間の心臓とよく似ていて、中心で左右を隔てる仕切りがあります。そして、それぞれに心房と心室があり、合計4つの部屋があります。
トカゲやヘビ
トカゲやヘビでは、心臓の中心の仕切りが、下部の心室の部分までしかありません。心房の部分が左右で一つにつながっているんですね。
そのため、全身から戻ってきた静脈血と、肺から戻ってきた動脈血の一部が心室で混ざってしまいます。
カエルやイモリ
カエルやイモリでは、中心の仕切りが完全になくなり、心房と心室が全体で一つずつしかありません。そのため、心臓の中では全身から戻ってきた血液と肺から戻ってきた血液が混ざり合っています。
これでは肺に行って酸素を取り込む前に、心臓から全身に戻ってしまう血液が多く、酸素不足になるんじゃないか…と思うかもしれません。
しかし、カエルやイモリは、肺だけでなく全身の皮膚でも呼吸します。皮膚の表面でも、直接血液に酸素を取り込んだり、二酸化炭素を出したりしているのです。
魚
魚の場合、上で紹介した動物とは違って肺を持たず、えらを使って呼吸します。そのため、そもそも肺循環をもちません。
全身から心臓に戻ってきた血液は、まず心房から心室へ送られた後、心室からえらの方へ送り出されます。そして、えらを通る時に酸素を取り込み二酸化炭素を放出すると、一旦心臓へ戻ることなく全身を巡ってから、再び心臓へ戻ります。
呼吸の仕組みと心臓のつくり
以上のように、心臓のつくりはそれぞれの動物の呼吸の仕組みとも密接な関係があります。様々な動物の呼吸の仕組みはこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください!↓
まとめ
- 心臓→全身→心臓という血液の流れを体循環、心臓→肺→心臓という血液の流れを肺循環と呼ぶ。
- 人間の心臓には、全身からの血液が流れ込む右心房、肺へ血液を送る右心室、肺からの血液が流れ込む左心房、全身へ血液を送る左心室、という4つの部屋がある。
- 心臓の中央には左右をわける仕切りがあり、左右それぞれの心房と心室の間、心室と血管の間には弁がある。
- 酸素が多く鮮やかな赤色の血液を動脈血、酸素が少なく暗い赤色の血液を静脈血という。
- 体循環では動脈を動脈血が、静脈を静脈血が流れる。
- 肺循環では動脈を静脈血が、静脈を動脈血が流れる。
- 人間以外の動物では、呼吸の仕組みの違いによって、心臓の構造も異なる。
コメント