前回、食べ物を分解して細胞が利用できる養分を取り出す、消化という仕組みについて解説しました。口から取り込んだ食べ物は、その先の消化管の中で目に見えないくらい細かい物質のレベルまで分解されます。
しかし、こうして食べ物から取り出した養分を細胞が利用するためには、養分を消化管から細胞へ運ぶ必要があります。
また、養分は細胞内で使われる際に、体にとって有毒な物質や不要な物質を発生します。これは、無害化したり体外に出したりする必要があります。
今回は、消化によって取り出した養分を吸収する方法と、不要な物質を体外に排出する方法について解説していきます!
消化についての記事はこちら!↓
消化された養分は小腸で吸収される
口から取り込んだ食べ物は、消化管の中で消化され、目に見えないほど細かい物質になります。これを体の内部に取り込むはたらきを吸収と言います。
食べ物を飲み込んだら時点で、体の内部に入っているんじゃないの?という気がするかもしれません。実は、生物学的には消化管の中は「体の外部」なんです。
ちくわの穴を想像してみてください。人間の体はちくわの身の部分、消化管はそれを貫いて開いている穴と同じです。穴の中は外側と直接通じていますよね。
このように考えると、消化管にある食べ物はまだ体の外部にあります。これを体の内側、ちくわの身の部分に取り込む働きが吸収というわけです。
吸収はおもに小腸で行われるため、小腸には吸収のための構造が見られます。
小腸の構造
それでは、小腸の構造を詳しく見ていきましょう。小腸の壁を観察すると、そこにはたくさんのひだがあり、そのひだの表面が小さな突起で覆われていることがわかります。この突起は柔毛と呼ばれています。
このひだや柔毛は何のためにあるのでしょうか。柔毛の表面には、養分が通るための構造があり、そこに接した養分を吸収していきます。
つまり、小腸の中の養分と接することができる面積が大きいほど、効率良く養分を吸収できます。そこで、小腸内部にひだや柔毛を作ることで、小腸の表面積を広げているのです。
これは肺の内部の表面積を広げるための肺胞と良く似ていますね。
肺の構造について復習したい方はこちらの記事をご覧ください!↓
ブドウ糖やアミノ酸の吸収
ここからは、それぞれの養分がどのように吸収されるのかを紹介していきます。
ブドウ糖やアミノ酸は、柔毛の表面から吸収され、その中の毛細血管に入ります。この毛細血管は、肝臓につながる門脈(肝門脈)という血管に続いています。
ブドウ糖やアミノ酸はこの中を通って、まず肝臓に入るのです。肝臓に入ったブドウ糖やアミノ酸の一部は、肝臓の細胞に使われます。また、血液中に十分な養分が含まれている場合は、肝臓の中で別の物質に変えられ、必要な時まで蓄えられます。
肝臓の細胞に使われたり、蓄えられたりしなかったものは、そのまま血流に乗って全身の細胞に届きます。しかし、食事から時間が経つと、全身の細胞に使われて、血液中の養分は少なくなりますよね。
ここで肝臓に蓄えられた養分の出番です。一時的に別の物質になって蓄えられていた養分は、再びもとの形に戻り、肝臓から血液中に放出されます。
このようにして、食事から時間が経っても、血液中に常に十分な量の養分が供給されるのです。
脂肪酸とモノグリセリドの吸収
脂肪酸やモノグリセリドも、柔毛の表面から吸収されますが、柔毛の中に入ると再び脂肪に戻ります。一度、脂肪酸とモノグリセリドの形に分解されたのは、柔毛の表面を通るためなんですね。
その後、脂肪は毛細血管ではなくリンパ管に入り、リンパ管が血管とつながる首の下で血液と合流します。
水や無機物の吸収
水やカルシウム、マグネシウムなどの無機物は、小腸だけでなく大腸の表面でも吸収されます。
これらは毛細血管に入って、そのまま血液の成分の一部になります。
消化管でできた不要物は便になる
口から入れた食物の全体が消化され、吸収され、利用されるわけではありません。食物の中には、消化できない物質や吸収できない物質も含まれています。
このような物質は、食物が消化され、小腸や大腸で養分や水分が吸収された後にも残り続けます。そして、最終的に便となり、肛門から出ていくのです。
消化吸収されなかったものの他に、腸の中で発生した不要な物質も便になります。たとえば、腸管の細胞が剥がれ落ちたもの(皮膚でいう垢のようなイメージ)や、腸の中に住み、消化を助けたりしている微生物の死骸や排出物などが含まれます。
体の内部でできた不要物は尿になる
先ほどは消化管の中でできた不要な物質が便になると説明しましたが、ここからは体の内部でできた不要な物質を体の外部に出すしくみを見ていきましょう。
体の内部でできた不要な物質は、尿となって体の外部に出ていきます。このようなしくみを排出と言います。便による不要物の出し方は排出とは別なので注意しましょう。
ところで、体の内部でできた不要物とはどのようなものでしょうか。実は細胞は、細胞の呼吸など、養分を利用して活動する際に、不要な物質を発生します。
また、食べ物や飲み物から水分や無機物を過剰に吸収してしまった場合、血液の濃度を一定に保つため、余分な水分や無機物も排出する必要が出てきます。そして、このような不要物の排出に重要なはたらきをしているのが、肝臓や腎臓です。
肝臓のはたらき
細胞の活動ではさまざまな不要な物質ができますが、中でもタンパク質を分解するときに発生するアンモニアは、体にとって有害です。これを、まずは尿素という無害な物質に変えるはたらきをしているのが肝臓です。
ところで、肝臓はここまでも何度も出てきましたよね。肝臓は、多種多様な働きをしている非常に重要な部分なのです。
腎臓のはたらき
腎臓は一言で言うと、血液から尿を作るための部分です。腎臓には太い血管が繋がっていて、多くの血液が出入りします。
この腎臓には、血液を濾過して不要な物質を取り除くためのしくみがあり、ここで取り除かれた不要な物質が尿になるのです。
肝臓で作られた尿素も、一度血液に混ざり、血流に乗って腎臓まで運ばれてきて、血液から取り除かれます。その他血液に含まれる余分な水分や無機物も、ここで取り除かれます。
水を飲み過ぎると、トイレが近くなりますよね。水分の摂り過ぎで血液が薄くなってしまわないように、腎臓が調整しているのです。
腎臓で作られた尿は一度膀胱に溜められた後、体外に排出されます。
まとめ
- 消化された養分は、小腸の柔毛の表面から体内に吸収される。
- ブドウ糖やアミノ酸:柔毛の表面から毛細血管に入り、門脈を通って肝臓へ運ばれる。一部は肝臓で使われたり蓄えられたりする。
- 脂肪酸とモノグリセリド:柔毛に入った後、再び脂肪になり、リンパ菅に入って首の下で血液と合流する。
- 水や無機物:小腸と大腸で吸収される。
- 消化吸収されなかった食物中の物質や、腸内でできた不要物は便になる。
- 体の内部でできた不要物は、尿として体の外部に排出される。
- 肝臓はタンパク質の分解でできた有害なアンモニアを無害な尿素に変える。
- 腎臓は血液を濾過し、尿素などの不要な物質と余分な水分や無機物を取り除いて尿を作る。
- 尿は一度膀胱で溜められてから排出される。
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