私たちの身の回りには、人間をはじめとして犬や猫、鳥、魚、虫…など、様々な動物がいます。学問の世界では、これら動物を見た目や体の構造・機能に応じて分類してきました。
今回は、動物の大きな分類の一つである、脊椎動物について中学生レベルで簡単に解説していきます!
背骨がある動物:脊椎動物
以前の記事で、植物の分類について紹介しました。↓
植物と同じように、動物も様々な種類に分類できます。
この動物分類で、最も大きな基準の一つが、「背骨があるかないか」です。
私たち人間や、犬や猫、魚などには背骨がありますが、アリやタコには背骨がありません。
理科では、背骨のことを「脊椎(せきつい)」と呼びます。
そして、脊椎のある動物のことを脊椎動物、ない動物のことを無脊椎動物と言います。
神経についての記事で紹介した通り、脊椎の中には脊髄という神経の束が通っているのでした。
脊椎があるかないかで、骨格のつくりだけでなく、神経の張り巡らされ方なども大きく変わってくるのです。
脊椎動物の分類
さらに脊椎動物の中には、体の構造や機能によって次の5つの分類があります。
以前の記事で、植物の祖先はもともと海にいて、時代を超えて進化しながら陸上に進出したという話をしました↓
動物も祖先は海にいて、そこから徐々に陸上に出てきたと考えられます。
実際、脊椎動物は「魚類→両生類→爬虫類→鳥類/哺乳類」という順に進化したと言われています。
完全に水の中でしか生きられない魚類。
オタマジャクシがカエルになるように、子の時は水の中にいて、成長すると陸上に出てくる両生類、そして生まれた時から陸上で過ごす爬虫類、鳥類、哺乳類。
というように、生活する場所を観察するだけでもわかりやすいですね。
さらに、それぞれの体の構造や機能を見てみると、この順に海の生活から陸の生活に適した体へと変化していることがわかります。
脊椎動物の分類方法
それでは、脊椎動物の分類のしかたを詳しくみていきましょう。脊椎動物の分類では、次の特徴に注目します。
子孫ののこし方
脊椎動物の子孫ののこし方には、主に卵生と胎生の2種類があります。簡単に言うと、母親から卵の状態で生まれるか、体ができてから生まれるか、ということです。
私たち人間は卵の状態で生まれてくるのではなく、お母さんの子宮の中で成長し、体がある程度出来上がってから生まれてきますよね。人間を含む哺乳類は胎生です。
一方、哺乳類以外の脊椎動物は卵の状態で生まれ、卵の中で体が成長して孵化する、卵生です。
哺乳類にも卵はありますが、これは母親の体内で受精した後、母親の子宮の中で養分を受け取りながら育ちます。
しかし卵生の卵は、孵化できる状態まで成長するのに必要な養分を含んでいて、母親の体から独立して成長します。
卵が育つ場所
卵生の動物の中でも、卵が育つ場所が水中なのか陸上なのかによって、卵の育ち方や様子に違いがあります。
脊椎動物が水中から陸上へ進出してきたことを考えると、わかりやすいですね。
水中で育つ卵は、殻を持たず柔らかい状態で生まれてきて、受精も卵が母親から生まれた後に水中で行われます。
一方陸上で育つ卵は、乾燥した陸上の環境に耐えられるよう、母親の体内で受精した後に、硬い殻を持って生まれてきます。
魚類や両生類の柔らかい卵では、陸上で育つことができないんですね。
子の育ち方
子供の育ち方にも、分類によって違いがあります。
イメージとしては、「進化が進むほど子供に手がかかるようになる」という感じです(*あくまでイメージです!)
魚類・両生類
魚類や両生類では、親は卵を産んだ後、ほとんど世話をしません。
また、卵には孵化するまでの成長に必要な養分が含まれていると説明しましたが、魚類や両生類の卵は爬虫類などと比べて養分が少なく、まだ小さい状態で孵化します。
卵から孵った後は、自力で食べ物をとらなければいけませんが、そもそも自分が小さく、速く泳ぐこともできないので、他の動物に食べられてめちゃくちゃ死にます。
「それじゃ子孫がのこせないのでは?」と思うかもしれませんが、その分一回に大量の卵を産むので、運良く生き残る子も出てくるわけです。
「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる戦法」と言ってもいいかもしれません。
爬虫類・鳥類
爬虫類や鳥類の卵には養分が大量に入っていて、魚類や両生類よりは成長した状態で孵ります。
爬虫類と鳥類の違いとしては、爬虫類の卵は親が世話をしなくても育つものがほとんどですが、鳥類の卵は親があたためる必要があります。
また、鳥類は卵から孵った後も、しばらくは親から食物を与えられて育ちます。親が卵や雛の世話をするイメージは鳥類ならではですね。
このように親の手がかかる分、鳥類の一回の産卵数は少なめです。親が世話を焼くことで、成長する前に他の動物に食べられてしまう危険性なども低くなるのです。
「数打ちゃ当たる戦法」から「少数精鋭」へシフトしてきましたね。
哺乳類
こちらはさらに少数精鋭になります。
母親の体内で十分成長した後、生まれてからも「哺乳類」という名前の通りしばらくは母親から乳をもらって育ちます。
呼吸の仕方
陸上で生活する爬虫類、鳥類、哺乳類は肺で、水中で生活する魚類は、水に溶けた酸素を取り入れるためのえらを使って呼吸します。
子の間は水中で、成長すると陸上に出てくる両生類は子の間にはえらで、成長すると肺と全身の皮膚で呼吸するようになります。
呼吸のしくみについて、詳しくはこちらの記事で解説しています!↓
体の表面の様子
これも水中から陸上への進化を考えるとわかりやすい特徴です。
後に進化したものほど、乾燥に強い構造をしています。
体温の保ち方
私たち人間は、外の気温に関わらず、体温はいつも36度前後で一定です。
しかし、例えばヘビやカエルなどは、気温が高くなると体温も高くなる、というように、外界の気温に応じて体温も変化します。
ヘビやカエルのように、外界の温度が変わると体温が変わる動物を変温動物、人間のように、外界の温度が変わっても体温が一定に保たれる動物を恒温動物と言います。
恒温動物の「恒」は、「変わらず一定である」という意味をもつ漢字です。
脊椎動物の中では、魚類、両生類、爬虫類が変温動物、鳥類、哺乳類が恒温動物です。
恒温動物と変温動物の違い
恒温動物がなぜ一定の体温を保てるのかと言うと、気温が高い時には体から熱を逃し、気温が低い時には体に熱をためたり熱を発生させたりするしくみを持つからです。
暑い時に汗をかき、寒い時に体が震えるのは、体温を一定に保つためのしくみの一つです。
体温を一定に保つために、恒温動物は変温動物より普段から多くのエネルギーを必要とします。
それでは変温動物の方がエネルギーを節約できて得なのでは?と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。体温は、高すぎても低すぎても体が正常に機能しなくなってしまいます。
例えば体温が高くなりすぎると、体をつくっているタンパク質が固まってしまいます。それは変温動物でも同じです。
しかし変温動物は自分で体温を調節できないので、温度が下がったら日光浴をするなど、場所を移動したりする必要があります。
しかし、それにも限界があるため、変温動物の方が外界の温度変化に弱いと言えるでしょう。
実は、水の中は陸上よりも温度変化が緩やかです。恒温動物への進化も、陸上の環境へ対応した結果と言えるかもしれません。
分類ごとの特徴まとめ
基本的には次のように特徴を見ていけば、脊椎動物のうちどの分類に当てはまるのかを判別することができるでしょう。
しかし、一つの特徴だけを適当に選んで判断すると、分類を間違えてしまうことがあります。
鯨は哺乳類
例えば、鯨は水中で生活しますが、実は哺乳類です。これは子孫ののこし方を見ると一目瞭然で、卵を産むのではなく子宮の中で子供を育てて出産します。
また、水中で生活するにも関わらず、えら呼吸ではなく肺呼吸です。その証拠に、時々水面に顔を出して息継ぎをします。(息の続く時間は人間とは比べ物になりませんが…)。
鯨は陸上で進化した哺乳類が、もう一度海に戻った生物だと考えられています。イルカやシャチなども、水中で生活する哺乳類です。
まとめ
- 背骨がある動物を脊椎動物、ない動物を無脊椎動物という。
- 脊椎動物は魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に分類される。
- 卵を産む子孫ののこし方を卵生と言い、子宮の中で卵が育ち、子の体ができて出産する子孫ののこし方を胎生という。
- 魚類、両生類、爬虫類、鳥類は卵生
- 哺乳類は胎生
- 魚類、両生類の卵は殻がなく、水中で受精し、水中でかえる。
- 爬虫類、鳥類の卵はメスの体内で受精し、殻があって陸上の乾燥に強い。
- 魚類、両生類、爬虫類は卵を産んだ後ほとんど世話をしないが、鳥類の卵は母親が温める必要がある。
- 鳥類は子が孵った後もしばらく餌を与えて育てる。
- 哺乳類は出産後しばらくは、母親が乳を与えて子を育てる。
- 爬虫類、鳥類、哺乳類は肺呼吸、魚類はえら呼吸、両生類は子の頃はエラ呼吸、大人になって陸に上がると肺呼吸と皮膚呼吸になる。
- 分類ごとに体の表面の様子が違う
- 魚類:水を通すうろこで覆われている。
- 両生類:うろこがなく、乾燥に弱い湿った皮膚
- 爬虫類:水を通さない硬いうろこで覆われていて、乾燥に強い
- 鳥類:羽毛で覆われている
- 哺乳類:柔らかい毛が生えている
- 外界の温度が変わると体温が変わる動物を変温動物、外界の温度が変わっても体温が一定に保たれる動物を恒温動物と言う。
- 変温動物:魚類、両生類、爬虫類
- 恒温動物:鳥類、哺乳類
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